「マネー」
・・・なぜ人はおカネに魅入られるのか・・・
ベルナルド・リエター著、堤大介訳(ダイヤモンド社・3200円)
2001年10月12日発売

◆はじめに
 お金はなぜ強力に人の心を支配しているのか? お金が人の心をねじ曲げるのはなぜか? 貧富の差、不道徳、犯罪……。お金は欠点だらけである。お金なるもの、それは最後のタブーのひとつであった。これを理解するには、私たちはまず自分の内なる感情と向かい合う必要がある。

◆1章 欠乏の恐怖
「個人が見る夢はただの夢よ。でも集団で見る夢は現実なの」(オノ・ヨーコ)
「この世で最も危険な動物」(動物園の鏡の下にある表示)
 この本では、お金がまさに「われわれの内界を、目に見える現実に具体化する」手段であることを述べる。つまりお金とは、無意識の力を物質世界に投影し、強化する手段なのだ。

◆2章 始めに偉大なる母性ありき
 グレートマザーの原型は、どのように進化したのだろうか? 彼女は地球上のいたるところに存在しており、決してヨーロッパだけに見られるものではない。だがグレートマザーは、西欧人の無意識の形成に影響を与えて「お金」を今日の姿にし、世界中の通貨制度を方向付けたのだ。

◆3章 陰と陽の結び付き
 すべての影に共通しているのが恐怖心である。だれにも健全な恐怖心があり、またその恐怖とセットになった欲求がある。たとえば飢餓と食料、失恋と愛情、死と生存である。ところが恐怖心が凝固すると病的な影が消えずに残る。西洋で歴史的に行なわれた「グレートマザーの抑圧」とは、進歩的な社会活動を恐怖の中に封じ込めるものであったことがわかる。現代のお金に染み込んでいるのは、この種の恐怖なのだ。

◆4章 お金の狂気
「お金の狂気」、つまり一般に「バブルとその崩壊」と呼ばれる景気変動は世界のどこかで15年から20年に一度くらい発生する。そんなお金の“躁鬱病”を防ごうと、エコノミストや官僚たちは何世紀もかけて市場のルールを調整してきた。にもかかわらず、この病いは治らなかった。お金は時を超えて花開く「耐寒性多年生植物」のようである。その植物は、“躁”になって花開き、やがて“鬱”となってしぼむ。

◆5章 中世ヨーロッパのマネーシステム
「地球が女の体だと信じられていた時代の名残り、それが黒聖母である」
(ルシア・C・ビルンバウム)
 グレートマザーは西洋で容赦の無い抑圧にさらされ続けてきたが、中世の黒聖母だけは、なぜか唯一の例外であった。黒聖母はグレートマザーへの崇拝が熱狂的に復活したときの密教的崇拝対象であり、、驚くほど多くの糸でエジプトと結ばれている。お金にデマレッジが課せられなくなると同時に黒聖母崇拝とイシス信仰も衰退し、と同時に一般庶民の生活水準までもが急激に悪化した。

◆6章 エジプトのマネーシステム
「三〇〇〇年の歴史を視野に入れない人間は、時の檻に囚われて暗闇の中をさ迷い生きるしかない」(ゲーテ)
 エジプト人は、自分たちのお金とそのシステムに満足していた。ギリシャ人がエジプト人に向かって「そいつは何の変哲もないオストラカ(陶片)じゃないか」とからかうと、エジプト人は「金貨と銀貨への執着心のほうが理解できない」と応酬したという。エジプト人はギリシャ人の金貨や銀貨を「お国自慢の虚栄心か愛国心、意味のない自己宣伝のかけら」と見なした。

◆7章 グレートマザーと現代のマネー探検
「待ち続ける時代は終わった。沈黙は破られた……さあ聴きなさい。私たちは祖母のそのまた祖母の心髄を受け継いで……いま甦る。あなたは私たちの存在を決して忘れないだろう。あなたとともにあるこの存在を。そしてあなたは私たちだということを。忘れないで……忘れないで……」(パトリシア・レイス)
「ただ一つだけ予言できることがある。これから起こる最大の変化は、知識における変化だということである。すなわち、知識の形態と内容、意味、責任、そして“教育ある人間”たることの意味の変化である」(ピーター・ドラッカー)

◆8章 私たちは今どこにいるのか
「古い言葉が語り尽くされたとき、音楽が心からあふれ出る。過去の足跡が消え去ったとき、新しい国が奇跡とともに誕生する」(タゴール=インドの詩人・宗教哲学者)

◆エピローグ 未来の物語
 その孤独な女神は山奥にある水晶宮殿で寂しく暮らしていた。宮殿のインテリアと家具はすべて純金製という豪華さだったが、女神の話し相手は自分の周りを静かに飛び回る純白のフクロウしかいなかった。
 女神は真冬のある朝早く散歩に出かけた。女神は凍った湖のほとりでカシの木の根元に腰を下ろした。女神の手が優雅に動いたそのとき、足から金の靴が抜けて落ち、凍った湖面の上でくるくると幻想的な輪を描いた。
 ちょうどそのころ、湖の下の洞窟では、魔術師が大きな釜にゴウゴウと炎を燃えたぎらせていた。


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